ホルンと私とドボルザーク
(2024年2月28日更新)

50才半ばで久しぶりにホルンの楽器ケースを開けてみた。青春時代の思い出があふれだす。
この記事ではホルンとの出会いから今日までの出来事をまとめてみました。
ホルンとの出会い
私自身、小さい頃から音楽に触れる機会が多かったと思います。
父親がオーディオに凝っており、ステレオなるものを持っておりました。レコード盤もありました。そこで父親が聞いていた音楽は映画音楽やポールモーリアなど、歌詞のない音楽でした。私もその環境に預かりアニメの曲や童謡などを聴く機会がありました。物理的で機械的なレコード盤を操作するのが大好きでした。
小学校になってからの音楽の授業は楽しかったです。歌はうまくありませんでしたが、音楽鑑賞の時間がとても楽しかったのを覚えています。
衝撃的な出会いは小学校5年生の時の音楽鑑賞。ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」の第4楽章を聴いた時です。かっこよくファンファーレの旋律が流れます。
音楽の先生に聞きました。
「これは何の楽器ですか?」
先生は答えました。
「ホルンという楽器だよ。」と。
先生に LPレコード を貸してもらい、家のレコード盤で何度も聴いた覚えがあります。その後、第1楽章から第3楽章もあるんだと気付き、ここでまた衝撃です。第2楽章は聞いたことのある曲でした。「家路より」じゃないですか。クラッシック音楽とホルンという楽器の出会いでした。
中学生になってクラブ活動があります。もちろん吹部、第1希望はホルン。楽器をもって最初に出た音は中音のFの音でした。
部活動始まってからショック
「えー!ホルンは後打ちばっかりやん。」
後打ちとは、

といったフレーズです。
音楽の先生に尋ねました。
「クラシック音楽はやらないのですか。」
先生はいました。
「吹部でクラシック音楽やらないし、曲の難易度が高いのでできないな。」
「でも楽譜は楽器屋に行けばミニスコア本が売ってるよ。」
と教えてくださいました。
街の楽器屋に行き、ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」のスコア本を買いました。中学生にとって、大きな買い物でした。ホルンのパートの部分を五線譜に書き写し、なんだか楽しい時を送ってました。
レコードを買うお金もありません。ですので NHK FM の番組をカセットテープにダビングします。曲が長いので片面60分のカセットテープ(120分テープ)を買います。これも痛い出費です。
自分の心の中でこのように整理しました。
- 部活でやる曲は吹奏楽の曲。仕方ない
- 自分の趣味で聴く音楽はクラシック
と、分けて考えるようにしました。
ホルンの活躍するかっこいい曲は世の中にたくさんあるはずだ、と思いながら過ごしていました。いろいろなクラシック音楽を聴きました。チャイコフスキーの交響曲第5番第2楽章の美しいホルンソロ。物悲しい「亡き王女のためのパバーヌ」。マーラーの交響曲第5番第1楽章のかっこよすぎるホルン。。。
「新世界より」を演奏する機会が来たが。。。
高校生の頃、地方ブロック演奏会なるものがありました。近所の学校と混じって100人規模の大編成で、大曲を演奏するという企画です。曲は「新世界より第4楽章」でした。
「おお、うれしい!。あれ?調が違う。2度低い?」
理由は吹奏楽アレンジ楽譜だったからです。弦楽器の部分をクラリネットが必至で演奏しています。
こういう世界もあるのか。まさに新世界でした。
「これは面白い!」
と、いう感情と同時に、原調でオーケストラでやってみたい願望が増すのでありました。
自分の楽器を手に入れる
学校の楽器は古いんです。傷や凹みも多く、夏場汗をかくと手に青錆が付着します。青錆は猛毒です。
進学するごとに楽器が変わる。自分の楽器が欲しくが、学生の身分でお金がない。
社会人になって、給与をもらってやっと自分のホルンを買いました。
今度こそ本物の「新世界より」を演奏する機会が来た
社会人になってからも、下手ながらホルンを続けていました。
あるきっかけでアマチュアオケで「新世界より」を演奏することになりました。もちろん全楽章です。小学校の頃に聴いた、あの曲を自分が演奏している。夢心地なステージでした。
今はどうだ
やがて仕事が忙しくなり家庭を持つようになり、ホルンを吹く機会がなくなってきます。楽器ケースすら開けなくになってしまいました。
そして今、シニアになってその封印が解けました。今まで演奏した楽譜もたくさん出てきました。
「新世界より」の楽譜も出てきました。
譜面に色々と赤色で書き込みがされています。当時の自分の一生懸命な行動や気持ちが蘇ってきます。今一度、「新世界より」を演奏してみたい。
じゃあ、数十年のブランクの穴埋めのために、まともに音が出るように、練習するしかないね。シニアなので、心肺機能にも気をつけて。口・のど・舌・腹筋も傷めないように無理せずに。体を労わりながら、自分のできる範囲でホルンを続けられたら、いつかチャンスが来るかな。
さあ、練習しに行こう。
ホルンに対する死生観
中学生の頃、楽器をもって最初に出た音は中音のFの音でした。
今、ホルン練習で最後に鳴らす音は中音のFの音と決めています。
死生観でしょうか。Fで始まり、Fで終わりたいのでしょうか。
