紫金山・アトラス彗星は8万年後に地球返ってくる!?

(2025年1月2日更新)

紫金山・アトラス彗星

2024年の秋。紫金山・アトラス彗星が地球に接近し立派な長い尾を見せてくれました。天文ファンだけでなく、一般の方やマスコミに取り上げられ、SNSにたくさんの素晴らしい写真が投稿されました。その中で8万年後にもう一度地球に戻ってくるという記事を目にしました。確かにNASAが一時的にそういった発表をした模様です。最新情報では紫金山・アトラス彗星は地球に戻ってこないということです。
この記事ではそのような情報の源は何かを説明したいと思います。

この記事でわかること
・軌道を決める離心率とは何かがわかる
・離心率は変化することがわかる

紫金山・アトラス彗星は8万年後に地球返ってくるか

最新の彗星の軌道計算では8万年後に地球は戻ってきません。それどころか二度と地球に戻ってくることはありません。彗星軌道の要素に軌道離心率というものがあります。細かい数式には触れませんが、軌道離心率の値によって軌道が決まります。

軌道離心率とは

軌道離心率はeという記号で表します。軌道離心率の値によって軌道の形が決まります。

軌道離心率(e)軌道の形
1e=0円軌道
20<e<1 0に近い円に近い楕円軌道
0<e<1 1に近い細い楕円軌道
3e=1放物線軌道
4e>1双曲線軌道
5e=∞直線軌道

軌道離心率(e)の値と軌道の形

2024年11月の紫金山・アトラス彗星の軌道離心率(e)は1.000092とされています。1よりもわずかに大きいため双曲線軌道ということになります。つまり、紫金山・アトラス彗星は今後二度と太陽へ近づくことはありません。見られるのは今回限りなのです。

他の星の軌道離心率は

太陽系の惑星と76年周期で地球に現れるハレー彗星の軌道離心率を見てみましょう。

天体軌道離心率(e)軌道の形軌道の形
1水星0.2056円に近い楕円軌道
2金星0.0068まん丸 円軌道
3地球0.0167円軌道
4火星0.0934円軌道
5木星0.0485円軌道
6土星0.0555円軌道
7天王星0.0463円軌道
8海王星0.0463円軌道
9冥王星0.2490円に近い楕円軌道
10ハレー彗星0.967細い楕円軌道

出展 Wikipedia

地球は軌道離心率はほぼ0で太陽の周りを1年で1周します。太陽が見えない日はありませんし、太陽との距離が1年を通してほぼ一定で夏と冬で大きな気温差はありません。
仮に水星のように軌道離心率が0.2になると、太陽との距離の遠近差で暑すぎる夏と寒すぎる冬になってしまいます。
また仮にハレー彗星のように軌道離心率が1に近くなると、その差はさらに大きくなり、岩が溶けるほどの眩しく熱い夏と真っ暗で極寒の冬になってしまいます。 

離心率
太陽系の惑星の軌道シミュレーション(内側から水星、金星、地球、火星)
水星はかなり楕円形

軌道離心率は一定でない事実

紫金山・アトラス彗星の軌道離心率eは元期1800年では0.9999797とされていました。つまり1より小さいので戻ってくる彗星でした。しかし、元期2200年では1.0000353となっており、戻ってこない彗星になりました。なぜ、こんなことが起こるのでしょうか。
1つは彗星が痩せることです。彗星には尾があります。彗星は太陽に近づくととても暑くなり、昇華した水や岩石を本体から宇宙に放ち尾になります。つまり、太陽の熱で彗星が軽くなるのです。軽くなると彗星は加速します。この速度が軌道を変える一因になります。

まとめ

紫金山・アトラス彗星は地球に二度と戻ってこない彗星になってしまいました。「8万年後に会いましょう」は叶わぬ夢です。

おまけコーナー

よくよく考えると、例え彗星が8万年後に戻ってこようとも、1000年後に戻ってこようとも、 戻ってこなくても、どうでもいい話ではあります。ただ、一時的に8万年後に戻ってくる情報が流れ、その後訂正されたたため、その要素は何なのかが気になり調べてみました。そして軌道離心率に到達しました。その知識を共有したく記事にした次第です。
地球はほぼ円軌道で毎日当たり前のように太陽が顔を出します。軌道離心率がほぼ0だから。感謝ですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です