話題の紫金山・アトラス彗星はどこに見える

(2024年12月5日更新)

紫金山・アトラス彗星の見え方

マスコミやニュースで紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)の大接近で、長い尾をひいた素晴らしい彗星、数十年に一度の天体ショーが見えると報道されています。どの方向に何時頃見えるの?目で見えるの?など質問が寄せられています。実はこれはたいへん答えづらい質問です。なぜなら、お住まいの地域、天候、彗星事態の様態によって変わるからです。
そこで、この記事では
・東経135°北緯35°(日本)におけるシミュレーション値で表記する。
・天候は晴れで、真東~東南東、真西~西南西の低空(地平線や水平線)がよく見える場所であること。
・彗星が近日点通過後、崩壊せずに現状維持の状態で太陽を通過したと仮定する。
を条件にまとめてみました。

この記事でわかること
・彗星がいつどの方向にどの角度で見えるかがわかる
・スマートフォン、一眼レフで撮影する手順とポイントがわかる
・最新の彗星の明るさ予測がわかる
・彗星が見つけにくい理由がわかる

紫金山・アトラス彗星はどこに見える

日付ごとに、見える方向、高度、光度(等級)、見方を表でまとめました。2024年10月12日時点のデータ。彗星の状態によりデータは更新していきます。

日付
(2024年)
時刻方角高度光度
(等級)
見方備考
9月22日5:20東~東南東2.1°3.5低空・双眼鏡ろくぶんぎ座
9月23日5:20東~東南東2.7°3.5
9月24日5:20東~東南東3.2°3.3
9月25日5:20東~東南東3.7°3.2段々明るく
9月26日5:20東~東南東4.1°3.0低空には変わりない
9月27日5:20東~東南東4.4°2.9彗星崩壊が心配近日点(0.39AU)
9月28日5:20東~東南東4.5°2.8
9月29日5:20東~東南東4.5°2.7一番見やすい頃しし座に入る
9月30日5:20東~東南東4.3°2.6
10月1日5:20東~東南東3.9°2.6明るくなるが低空に
10月2日5:20東~東南東3.3°2.6
10月3日5:20東~東南東2.5°2.5急激に見にくくなる
10月4日5:20東~東南東1.3°2.5
10月5日5:20東~東南東0.0°2.5おとめ座に入る
10月6日5:20東~東南東-1.8°2.5
10月7日見えない
見えない
10月10日見えない
10月11日18:20西2.6°0.7低空おとめ座
10月12日18:20西~西南西6.8°0.8
10月13日18:20西~西南西10.7°0.9一番見やすい頃地球に最接近
0.47AU(約7100万Km
10月14日18:20西~西南西14.7°1.1
10月15日18:20西~西南西18.4°1.3双眼鏡で見れるオルバース彗星と接近
10月16日18:20西~西南西21.6°1.5高度上がり光度下がるM5(球状星団)と接近
10月17日18:20西~西南西24.9°1.7
10月18日18:20西~西南西27.8°1.9へび座に入る
10月19日18:20西~西南西30.0°2.1
10月20日18:20西~西南西32.0°2.3へびつかい座に入る
10月21日18:20西南西33.8°2.6天体望遠鏡が必要かも
10月22日18:20西南西35.3°2.8
10月23日18:20西南西36.0°3.0
10月24日18:20西南西37.6°3.2
10月25日18:20西南西38.5°3.4
10月26日18:20西南西39.2°3.6天体望遠鏡で見れる
10月27日18:20西南西39.7°3.8
10月28日18:20西南西40.2°4.0
10月29日18:20西南西40.6°4.2NGC6426(散開星団)と並ぶ
10月30日18:20西南西40.8°4.3
10月31日18:20西南西41.0°4.5
11月1日18:20西南西41.1°4.7新月
11月2日18:20西南西41.2°4.8
11月9日18:20西南西36.8°5.9
11月16日18:20西南西34.8°6.7へび座(尾)に入る
11月23日18:20西南西32.0°7.5天体望遠鏡+写真で確認できる
11月30日18:20西~西南西28.7°8.1わし座に入る
12月7日18:20西~西南西25.2°8.6
12月14日18:20西~西南西21.5°9.1
12月21日18:20西~西南西17.6°9.6
12月28日18:20西13.7°10.0
1月1日18:20西12.0°10.1新月
1月4日18:20西9.7°10.3
1月11日18:20西5.8°10.7

時間(5:20や18:20)は東経135°北緯35°の場合の観測に適した時間を記載しています。よって皆様のお住まいの地域により変わります。具体的な数値は計算が必要ですが、東経135°よりも東(名古屋・東京)になるほど日の出は早く、日の入りは遅くなります。逆に東経135°よりも西(九州・沖縄)になるほど日の出は遅く、日の入りは早くなります。

彗星はなぜ見つけにくいの

彗星はなぜ見つけにくいのでしょうか。

低空のため

彗星の尾が肉眼ではっきり見えるときは次の条件です。
・物理的に太陽と彗星が一番近づいた時か、その数日後まで期間
・物理的に地球と彗星が一番近づいた時
・地球から見て太陽と彗星が横並びでない位置関係(太陽が明るすぎで見にくい)

つまり、太陽の近くに彗星が見えるます。しかし、昼間は太陽が明るすぎで彗星は青空に中に見えません。見える時は太陽が地平線や水平線に隠れている時ということになります。したがって
・日の出直前
・日の入直後
という時間帯になり、どうしても低空になってしまいます。
加えて低空である故、雲やもや(水蒸気、黄砂、PM2.5)がかかり、見通しが悪くなります。よく晴れていても季節や湿度、風向きに左右されます。

見える時間が短いため

先程の「低空」にも関係しますが、彗星は太陽の近くに位置するため、見える時間が短いです。太陽が完全に沈んだり、太陽が地平線から顔を出すとみえないので、場合によりますが目安として
・日の出50分ぐらい前~日の出まで
・日の入~日の入50分ぐらいまで
です。どこにあるんだろうと探しているうちに時間が過ぎてゆきます。

空が明るいため

星は太陽の近くに位置するため、夕焼けや朝焼けの時間帯になります。空はまだ明るいです。

彗星の光が淡くて分かりにくいため

彗星の尾はもともと淡いです。例えば光度が3等星であっても、彗星の核の部分は3等星であって、尾の部分はそれより暗いです。まだ空の明るい時間帯になるため、夜中の3等星と同じ輝きではありません。

どうしても見たいという方に写真撮影という方法

こんな方いらっしゃいませんか。
・どうしても見たいけど肉眼では見つけられない
・双眼鏡を使っても見つけられない
・あっという間の時間が過ぎてしまい結局見つけられなかった

そんな方にお勧めは「写真撮影」です。
画面を通して間接的に観ることになりますが、確実な方法です。写真撮影をすると時間や撮影データを記録しますし、何より思い出になります。とにかくパシャパシャ撮って後でじっくり確認する。乱暴かもしれませんが、「数打てば当たる」戦法です。
では、具体的にスマートフォンの場合、一眼レフの場合について解説します。

スマートフォンで彗星を撮影する

スマートフォンの場合の手順とポイントです。

  1. 明るさ調整で「暗め」で撮影
     空が真っ白になったり、明るすぎると、尾が消えてしまいます。夕焼けがきれいな「バエル写真」は明るすぎます。
     機種によってはAUTOだと勝手に「バエル写真」になってしまうので、マニュアルモードに切り変えて明るさだけを暗く設定します。
  2. 1倍率、ピンチアウトして2倍率、3倍率などで撮影
     ピンチアウトとは、画面の上に2本指を置き、間隔を広げるように指を動かす操作方法です。
  3. やたら拡大しない
     欲張らず、まず彗星の存在を確認することが重要です。位置が分かったら拡大にチャレンジしましょう。
  4. 出来たら三脚に固定して撮影
    スマホを固定させる方法
    三脚にスマートフォンを取り付けるアダプタで固定します。固定できたら露光時間を1秒に設定して、試験撮影しましょう。
  5. とにかく何枚も撮る

一眼レフで彗星を撮影する

一眼レフの場合の手順とポイントです。

  1. 三脚に固定して撮影
     一眼レフはスマホに比べて重いため三脚を使いましょう。
  2. 焦点距離は標準から拡大していきましょう。
     焦点距離70mmでまず撮影。彗星は意外に小さいです。
     写っていなかったら200mm程度に拡大し、高さと方角を変えながら下図のように広い範囲を撮影する。
    紫金山・アトラス彗星の写真撮影
  3. マニュアルモードで暗めに撮影
     絞り大きくする、ISOを小さくする、撮影時間を短くするなど。
  4. とにかく何枚も撮る

まとめ

東経135°北緯35°(日本)におけるシミュレーション値でまとめてみました。彗星は見つけにくいものです。彗星を探すときは、肉眼より双眼鏡で探すが良いです。位置が分かってから肉眼でも見てみましょう。彗星は見つけにくいです。見つからない時は写真撮影をして後で確認するという方法もあります。

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